安城の家 / Villa801

2019年
愛知県安城市
専用住宅
RCマンションフルリノベーション

 

習慣と環境のリ・デザイン

愛知県郊外における築34年のマンション住戸のリノベーション計画。子供が家を離れて10年以上が経ち、勤め続けた企業での本格的なリタイヤが近づくなどのクライアントのライフステージの変化に伴う改修が求められた。そこで、水回り及び光・風・熱環境を暮らしに合わせて最適化するとともに、バリアフリー化と内装の木質化によって長く健康に暮らす場としてデザインした。

長年の暮らしの中で身体に染み付いた生活動線と空間記憶を汲みとり、水回りやリビング、畳の部屋の位置など動線に関わる間取りは大きく変えずに継承することとした。一方で、最上階区画・角部屋という恵まれた環境は特筆されるものがあったため、リビングには屋根勾配に沿った大胆な勾配天井を設け、西面の出窓を居場所化するなど、既存躯体の質を拡張するようにして新たな空間性の獲得を目指した。

 

暮らしに合わせた光・風・熱環境の最適化

新たに挿入されたシナ合板の勾配天井は、マンション住戸でありながらも戸建て住まいのような高揚感ある気積をもたらし、南面の既存開口部から入射する光によって柔らかく照らされ、リビング空間に高輝度の明るい面を形成する役割を果たしている。客間に設けた室内窓は、リビングからの視覚的な広がりを生み出すと共に、玄関へと抜ける光と風の通り道になる。出窓を拡張したニッチ状のソファスペースは、リビングと対になる小さな籠りの空間であり、夏の西日や冬のコールドドラフトによる冷気を緩衝する温熱環境の中間領域としても機能する。木目の綺麗な赤みのあるラワン合板で作られた建具と衝立壁は、自然素材の温かみのあるインテリアの要素として各場所に点在して、全体の一体感を演出している。

 

群としての住環境の質の向上へ

計画した住戸は十分な隣棟距離を配した合計800住戸を超える一団地のマンションの一部屋であるが、これらはかつてこの地にあった紡績工場の跡地を再開発されたものである。新築時からの丁寧な管理により、棟間の緑茂る公園とともに良好な住環境として成熟してきている。一方で、新築時から30年以上が経ったことで、新築当初に入居したファミリー層の家族構成は変化し、住み替えや居住者の高齢化が全体で起こっており、今後も丁寧な維持管理が継続できるかは不透明でもある。群として質の高い住環境が今後も継続されるためにも、時代や暮らしに応じた住戸の改修が住戸内に閉じずに地域のコミュニティに開かれ、波及し、ひいては一団地ならではの超高齢社会に応じた全体の整備や取り組みへと繋がることを期待している。

 


Collaborative design for kitchen and furniture
Scale Inc.


Photographs 
© Ookura Hideki / Kurome Photo Studio (1-20)