育てたくなる階段

入居後1年を迎えた「戸越銀座の賃貸併用住宅/Toritor(通リ通ル)」のクライアントから次の言葉をいただいた。

「光がたくさん入ってくるから植物の育て甲斐がある」

この建物は木造3階建の廊下のないスキップフロア構成で、2階の一部と3階がオーナー住戸になっており、1〜3階を行き来する暮らしのため、階段の上下動が苦痛にならず、むしろ移動そのものが楽しめる階段にしたいと思って、階段に沿って開口を設けた設計としている。

中庭が階段に隣接しているため、あえて足元付近に窓を配置。登る時と降りる時で視界が大きく変わるよう意図した。斜めに視線が抜け、自然光が時々刻々と変化することで、有機的な移動体験が生まれる。

木製手すりは木製サッシの窓枠とに呼応するプロポーションと色味に整え、空間の一体性を高めるようにしている。一般的なものよりやや太目の断面とし、使い続けるうちに手の痕跡が染みて味わいが増していくことも意図した。

階段は屋上テラスへと続いている。塔屋北側の大きな開口部からは安定した自然光を採り入れ、天井にはトップライトを設けることで、階段室がライトウェル(光井戸)も兼ねるようにしている。

暮らしの中心であるこの明るい階段には、吹き抜け高さを活かして植物を吊るす使い方が生まれ、旺盛に成長する緑が有機的な移動体験をいっそう豊かにさせてくれていた。

空間の構造が運用にポジティブにフィードバックし、まさに「育てたくなる階段」と呼べるものになった。

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